全盲の黒猫

我が家の三匹目にやって来たのは、両目が見えない黒猫ちゃんです。

出会いは何とも運命的でロマンチックなんですよ。笑

当時、ネットで引き取ってくれる人を探されている掲示板があって、「この人から引き取ろう」と思ったその人の家の場所は、私が生まれる前に両親が住んでいた借家の並びでした。

何だか繋がりを感じたのと、写真で特徴的な目をしている黒猫も見たりして、本当に何となくそこへ行く決心がつきました。

申し込みを完了させ約束の日時に夫婦で引き取りに行くと息子さんが対応してくれたのですが、玄関を開けられてびっくり。ゴミ屋敷と言っていいのではないだろうか。

とても足を入れれるような場所がなく、一匹ずつ持ってきて外で見せてくれるスタイルでした。

最初に「茶トラの猫がいたら見てみたい」と言ってしまって、連れてきてくれましたがやはりオス猫ちゃん。そして抱っこした感じあんまりしっくりきません。

可愛いのは変わりありませんが、あるんですよね感じるもの?が。

我が家にはメスしかいなかったので(ただそれだけの理由です、オスならオスでいいんです)「メス猫ちゃんはいますか?」と言うと、黒猫ちゃんを連れてきて「メスはこの子だけです」と言われました。

それが写真で見て印象に残っていた特徴的な目の黒猫でした。

「あ、この子だ!?」と思いつつも、なんだか猫の様子に違和感があったので伺いました。すると猫風邪を引いていると。この頃推定齢二ヶ月くらいです。

片方の目が開き切っていない感じを見て「この目はどうしてこうなんだろう?」と聞きますが、「猫風邪だからですかね?でも先週病院に連れてってもうそろ治ると思います。」と。

なんか怪しいけど、なんかあったとしても断る理由も見当たりませんでした。抱っこしていてもしっくりきます。「この子にします!」とお礼を申し上げて頂いてきました。

病院に連れて行って一通りの検査をしましたがエイズ等は見られませんでした。猫風邪はやはり猫風邪。特に鼻づまりが酷く口呼吸になってしまうことも頻繁で、その度に病院の吸入器に入れてもらうような感じで一向に治りません。

気長に、処方される薬で症状を軽くしながら成長と共に消えていった感じでした。

そして時々壁にぶつかることは引き取って一週間ほどで気付き始め、並行して動物眼科にも行きました。

眼科の先生からは、「これは母猫のお腹にいる時から見えてなかったと思う。見えるようになる可能性は低いけど100%ではないから目薬さしていきましょうか?」ということで、最初の頃は治療していました。

黒猫ちゃんは家では何個も処方される目薬を入れさせてくれていましたが、見えない事もあってか通院のストレスは大きく、特に遠い街中まで行かなければいけない眼科はのちに全員の負担となっていました。

ずっと泣き叫ぶので声が潰れてしまいそうです。病院の待合室では「あらまぁ怖いの?大丈夫?」と他の飼い主様に優しく声をかけてもらえるほど。

私から離れ奥での診察となると「んぎゃぁー!んなぁー!」みたいな悲鳴で、待合室の飼い主様方が「え?え?うちの子じゃないよね…」とざわつき不安になってしまわれます。「多分…うちの子です」と挙手して不安を解いてあげなくてはいけません。笑

そうこうしながら数ヶ月目薬を入れていましたが変化は見られそうになかったのもあり、夫婦で「切り上げどきかもね」と眼科はやめたのでした。

調べていた通り、家の中で過ごすなら目が見えなくても、猫の鋭い嗅覚と聴覚と勘?であんまり不自由はありません。

ただちゃんと物の場所を教えてあげることと、自分で降りれないような高い場所へは行けないような工夫と、普段物がない場所に一時的に物を置かないようにすればぶつかることもそうそうありません。

廊下はいつも物を置かないようにしているので、そこではダッシュできると覚えていて走ったりもします。
(全力ダッシュはさすがにしないですが。)

他の猫が行ける高い場所には行けないので、「なんでにゃー!」とぐるぐるその下を徘徊していることもありますが、逆に黒猫ちゃんだけの場所を用意してあげてバランスを取ってみたり。

今ではおよそ7年が経ちますが、免疫の面では毎年寒くなると家での処置で何とかなる鼻づまりだけは出てくるものの、他には何にも起きてきていません。

他の健康な猫がたまになってしまうような咳や下痢やアレルギー、気管支炎や大腸炎もない。

見た感じは一番ちっこくてか弱そうなんですが、免疫は一番強そう?

ゴミ屋敷に感謝ですね(笑)。


元タロット占い師。家に居るのが好き、一人で作業に没頭するのが好き。タロットで一番惹かれるカードは、まさに「隠者」です。

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